審判委員会


2005年 競技規則

2005年6月17日
関係各位

財団法人 日本サッカー協会

 国際サッカー連盟(以下、FIFA)から回状968号をもって2005年競技規則の改正について通達がありましたので、その日本語訳を送付します。それぞれの協会、連盟などで、加盟クラブ、チーム、審判員などの関係者に周知徹底を図られるようお願いいたします。
 回状にあるように改正等の効力の発生は国際的に7月1日からとなります。同様に、日本協会そして各地域、都道府県協会が主催する試合についても7月1日以降のしかるべき日から(遅くとも8月中に)施行することとします。なお、国民体育大会の地域予選(ミニ国体)は、新しい規則で行うものとします。


2005 競技規則の改正

 国際サッカー評議会の2005年次総会が2005年2月26日にウェールズのヴイル・オブ・グラモーガンで開催された。総会において決定された競技規則の改正および情報は、以下のとおりである。

1.競技規則の改正および評議会の決定

第3条 − 競技者の数
その他の試合


現在の文章
新しい文章
その他の試合では、最大6人までの交代を行うことができる。 国際Aマッチにおいては、最大6人までの交代を行うことができる。

その他のすべての試合においては、次の条件を満たせば、より多い人数の交代を行うことができる。
関係チームが最大交代選手数について合意する
試合前に主審に通知する

事前に主審に通知されない場合、または試合前に合意されなかった場合は6人を超えて交代することはできない。

[理由]
この改正により現在の考え方を明確にする。
<日本協会の解説>
 この改正によって、その他の試合(親善試合など)において交代できる最大の数を6名までと制限するのは、国際試合のAマッチに限られることになった。国際Aマッチ以外の試合では、昨年の競技規則の改正における日本協会の解説と同様の考え方で行われることとなった。すなわち、「日本協会傘下で行われる親善試合(国際Aマッチ以外の試合)では、その試合の目的そして開催時期の天候など様々な違いがあることから、それぞれの競技会規定に従うこととした。」に基づいて交代の数を決定することになる。ただし、条文中にある交代における2つの条件を満たしていなければならない。


第3条 競技者の数

違反と罰則

項目3

現在の文章
新しい文章
プレーを停止したときにボールがあった地点でボールをドロップしてプレーを再開する プレーを停止したときにボールがあった地点から、間接フリーキックでプレーを再開する

[理由]
 これは、承認なしにフィールドに入った交代要員のチームの反則であると考えられ、間接フリーキックで罰せられるべきである。
<日本協会の解説>
 チームの交代要員が主審の許可なしにフィールド内に入った場合、これまでは観客や犬などと同様に外部からの要因による出来事と考えられていたため、プレーの再開方法は主審がプレーを停止したときにボールがあった地点からのドロップボールであった。
 しかし、交代要員は単なる外部からの要因ではなく、チームの役員とも区別をして、プレーに関わるチームの一員であると考えるべきとの解釈である。したがって、主審の許可を得ない、交代要員によるフィールドへの無断侵入に対してはチームへの罰則として、相手チームに間接フリーキックが与えられることになった。ただし、罰則の適用に当たっては、主審はアドバンテージの適用を考慮しなければならない。


第5条 − 主審

主審の決定

現在の文章
新しい文章
主審は、プレーを再開する前ならば、その決定が正しくないことに気付いたとき、または主審の判断によって副審の助言を採用したとき、決定を変えることができる。 主審は、プレーを再開する前、または試合を終結する前ならば、その直前の決定が正しくないことに気付いたとき、または主審の判断によって副審の助言を採用したときのみ、決定を変えることができる。

[理由]
 主審が、笛を吹いて試合を終了させた後に副審のシグナルを見たというような状況が実際にフランスで発生したが、このような状況に対応するため競技規則の条文を明確にする必要があった。
<日本協会の解説>
 例えば、主審が一方のチームの得点を認めた後に副審からの合図に気づき、攻撃側選手の反則によって得点が無効であることを知った場合、相手チームにキックオフをさせる前ならば、得点を取り消し、反則によるフリーキックでプレーを再開させることができる。しかし、キックオフによる再開をさせてしまった後ならば、得点の決定を変えることはできない。このように、どの時点までなら主審は直前の決定を変更することができるのかを明確にしている文章だが、主審が試合を終結させる(前、後半、延長前半、延長後半)場合についても明確にする必要があった。
 フランスで実際に起こった事例は、主審が試合終了の笛を吹いたにもかかわらず、副審が旗を上げ続けたことで混乱が起きたというものであり、現在の条文には終了時(前、後半、延長前半、延長後半)の取り扱いには触れておらず盲点ではあった。
 なお、「試合の終結」とは、フランスで起こった事例から、「試合終了と前半および延長前半の終了の笛」を意味するものである。


第11条 − オフサイド

新しい国際評議会の決定事項

国際評議会の決定事項
決定1

 オフサイドポジションの定義における“相手競技者より相手ゴールラインに近い”とは、頭、体または足のどこの部分であってもボールおよび後方から2人目の相手競技者より相手ゴールラインに近いことを意味する。手と腕はこの定義に含まれない。

[理由]
 サッカーは、頭、体および足で競技されるものである。もしこれらが相手ゴールラインより近かったならば利益を得る可能性があるが、ただ単に手と腕だけが相手競技者より前方にあっても利益を得ることはない。
<日本協会の解説>
 ボールより前方にいる攻撃側の選手が「後方から2人目の守備側競技者より相手ゴールラインに近い。」、言い換えれば「オフサイドポジションにいる。」とは、これまでは、厳密な定義が明示されていなかった。指導と実践の上では、「身体の中心点を相手の身体の中心点と比較して前方にいるか否か」を判断していた。今回の改正で理由に挙げてあるように、手と腕を除いて身体の最も前方に出ている部分の面(点)を比較してオフサイドポジションにいるか否か判断することになったのは、理論上は明確になったと言える。


決定2

積極的にプレーにかかわるという部分の定義は、次のとおりである:
プレーに干渉するとは、味方競技者がパスした、または味方競技者が触れたボールをプレーする、あるいはこれに触れることを意味する。
相手競技者に干渉するとは、明らかに相手競技者の視線を遮る、または相手競技者の動きを妨げる、あるいはしぐさや動きで相手競技者を惑わす、または取り乱させると主審が判断し、それによって相手競技者がボールをプレーする、またはプレーする可能性を妨げることを意味する。
その位置にいることによって利益を得るとは、既にオフサイドポジションにいて、ゴールポストやクロスバーから跳ね返ってきたボールをプレーする、または既にオフサイドポジションにいて、相手競技者から跳ね返ってきたボールをプレーすることを意味する。

[理由]
 オフサイドは、これまで2シーズン以上にわたりこの定義に基づき判断されてきたが、9月に開催された国際評議会事務会議で解釈が承認された。この定義はその解釈に基づき修正されたものである。この国際評議会決定は、正しい認識を競技規則上に記載するものである。
<日本協会の解説>
 2003年の9月に開催された国際サッカー評議会の年次事務会議において、「オフサイドの判定に関する解釈」が決定され、国際サッカー連盟の回状874号にて加盟協会に通達されている。本協会では、その必要性から競技規則の日本語版付録に掲載(135ページ)してきた。今回の改正によって若干の言葉の修正が加えられ、第11条オフサイドの条項の国際評議会の決定事項・決定2として新しく明記された。当初の通達にもあるように、この解釈は、競技規則の改正ではなく、現行の競技規則の記述にすべて従ったものであり、この解釈の目的は、競技規則の尊重とサッカー競技の最終目標である得点を目指す攻撃的なプレーを保護するものである。


第12条 − ファウルと不正行為

懲戒の罰則

現在の文章
新しい文章
競技者または交代要員あるいは交代した競技者のみにレッドまたはイエローカードを示す。 競技者または交代要員あるいは交代した競技者のみにレッドまたはイエローカードを示す。
主審は、フィールドに入ったその時から試合終了の笛を吹いた後フィールドを離れるまで、懲戒の罰則を行使する権限をもつ。

[理由]
 主審がレッドカードやイエローカードを示す時期を定義づけることは重要なことである。これによって、試合終了の笛の直後にフィールド上で発生した出来事に対してカードが示すことができるようになり、現在の単なる報告より、より効果的である。
<日本協会の解説>
 この項では、主審が、レッドまたはイエローカードを示すことができる対象者について明記しているが、改正によって、これらの懲戒の罰則を主審が行使できる開始の時期と終了の時期が追記された。試合が開始されるキックオフの前であっても、主審はフィールド(フィールドとは、タッチラインとゴールラインで囲まれた部分を示す。ピッチとも表現されている)に入った時点から懲戒の罰則を行使できる権限を有するが、試合終了の合図(笛)をした後でも主審がフィールドを去るまでは同様の権限を有していることが明確になった。すなわち、主審が試合を終了してフィールドを去るまでの間に、競技者あるいは交代要員に退場または警告に値する行為があった場合は、レッドあるいはイエローカードを示すことができ、審判報告書の退場または警告の欄に記載することになる。したがって、単なる重要事項での報告ではなく、競技者や交代要員に対する罰則の重みが増すことになる。
 なお、競技規則の日本語版付録には、「主審の競技規則を施行する権限の開始と終了」について日本協会審判委員会の見解を示してきたが、今後はこの項の新しい文章に従うものとして削除した。


第12条 − ファウルと不正行為

決定4

現在の文章
新しい文章
相手の安全に危険を及ぼすような後方からのタックルは、著しく不正なプレーとして罰せられる。 相手の安全に危険を及ぼすようなタックルは、著しく不正なプレーとして罰せられなければならない。

[理由]
 後方からだけでなく側方や前方からのタックルであっても、相手を傷つける、または相手を傷つけてしまうかもしれないタックルは著しく不正なプレーとして罰せられなければならない。
<日本協会の解説>
 これまでは、競技者の安全を保護するために、特に競技者が無防備である後方からのタックルを厳格に罰するようにとの文章であった。今回の改正文章によって、退場処分とすべき、著しく不正なプレーは、後方からのタックルだけではないことが改めて強調されていることを認識しなければならない。


第14条 − ペナルティーキック

違反と罰則

ペナルティーキックを行う競技者の競技規則の違反:

項目3

現在の文章
新しい文章
ボールがゴールに入らなかった場合は、キックを再び行わない。 ボールがゴールに入らなかった場合、主審はプレーを停止し、守備側チームの間接フリーキックで試合を再開する。

 キックを行う競技者の味方競技者がペナルティーエリアに入る、ペナルティーマークより前方に動く、あるいはペナルティーマークから9.15m(10ヤード)内に入ったとき:

項目3

現在の文章
新しい文章
ボールがゴールに入らなかった場合は、キックを再び行わない。 ボールがゴールに入らなかった場合、主審はプレーを停止し、守備側チームの間接フリーキックで試合を再開する。
<日本協会の解説>
 この条項には、主審がペナルティーキックを行う合図をして、ボールがインプレーになる前に、攻撃側の競技者が行う違反、守備側競技者が行う違反、そして両方の競技者が行う違反と区別してそれぞれの罰則が整理されている。しかし、その中でも特に、ペナルティーキックを行う競技者(キッカー)の違反とキッカーの味方競技者による違反、すなわち、攻撃側の競技者による違反に関しての条文に不明瞭なところがあったため、新しい文章のとおり改正された。ペナルティーキックが行われた後、ボールがゴールに入らなかった場合とは、
1) そのままフィールドの外に出て、ゴールキックになる。
2) ゴールキーパーが保持する。
3) ゴールキーパーがはじきフィールドの外に出て、コーナーキックになる。
4) ゴールポスト、クロスバーまたはゴールキーパーからフィールド内に跳ね返る。
 などの状況があり、特に3)と4)については解釈が明確になっていなかった。1)と2)についてはアドバンテージを適用して、1)ゴールキックで再開、2)プレーを続けさせることでよいが、3)と4)についてはボールがはじかれた、あるいは跳ね返った時点でプレーを止め、違反のあった地点から、守備側チームの間接フリーキックで試合を再開させることになる。なお、複数の攻撃側の競技者が違反をした場合は、主審の判断により著しく違反をした競技者の位置から再開させることになる。


第15条 − スローイン

進め方

現在の文章
新しい文章
ボールが投げ入れるとき、スローアーは:
フィールドに面している
両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグランドにつけている
両手を使う
頭の後方から頭上を通してボールを投げる

ボールが他の競技者に触れるまで、スローアーはボールを再びプレーしてはならない。

ボールがフィールドに入った瞬間にボールがインプレーとなる。
ボールが投げ入れるとき、スローアーは:
フィールドに面している
両足ともその一部をタッチライン上またはタッチラインの外のグランドにつけている
両手を使う
頭の後方から頭上を通してボールを投げる

ボールが他の競技者に触れるまで、スローアーはボールを再びプレーしてはならない。

すべての相手競技者は、スローインが行われる地点から少なくても2メートル離れる。

ボールがフィールドに入った瞬間にボールがインプレーとなる。

[理由]
 スローインの際、ほぼタッチライン上に両足をおいてスローインをするスローアーの直前に相手競技者が立つ傾向が増大している。これは第15条に反しているわけではない。しかし、疑いもなくスローアーがスローインをし終えることを妨害している。さらに、両競技者間での争いごとが広がっていくことにもなりかねない。
 現在、プレーの開始、再開時に規定の距離を離れる必要がない場合はドロップボールとスローインのみである。この案によってスローインも他の競技規則と合致させることになる。
多くのメンバー協会がこのような状況に対して非公式に規定の距離を課しているのが実態である。この改正案が示されことによって競技規則適用の標準化を確保することになる。

2.通知

第12条 − ファウルと不正行為

新しい評議会の決定とするべく、次の提案がFIFAから提出された:

いったん主審がフリーキックを与えるために試合を停止した後、ファウルを犯したチームの競技者がプレーの再開を遅らせるために意図的にボールに触れたと判断されたならば、イエローカードをもって罰しなければならない。この罰則は、スローインまたはコーナーキックが相手チームに与えられたときにボールに触れた競技者、また、競技者のチームが得点をした後ボールをゴールネットから取り去った場合(相手チームのゴールキック)にも適用される。

[理由]
 明確なガイドラインを示し、ボールを数秒間抱える、あるいは遠くに投げることでプレーの再開を遅らせ、これによって守備側競技者のポジションを確保しようとする反スポーツ的戦術を止めさせなければならない。また、競技者がボールを争って取り合うとすることも止めさせなければならない。

 評議会は、FIFAがオランダで開催されるFIFAワールドユース選手権大会およびペルーのFIFA U−17世界選手権大会でこの提案を試行することを認めた。FIFAは次の年次総会で試行結果を報告する。

ボール:
 評議会は、FIFAがペルーでの2005 FIFA U−17世界選手権大会、日本でのFIFAクラブワールドチャンピオンシップトヨタカップジャパン2005時に新しいゴールラインボール技術の実験をすることを承認した。FIFAは、今後の会議の場において、この実験結果について報告する。
<日本協会の解説>
 FIFAより、以上の2件が国際サッカー評議会年次総会において提案され、試行あるいは実験という形で行われることが承認された。これらの結果報告を受けて、次回の年次総会または今後の会議において協議されることになろう。


 競技規則の改正は、2005年7月1日から効力を発することになり、指示および指令は即時効力を発する。


国際サッカー連盟
事務局長 ウルス・リンジ



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